クラウドファンディング業者に金融庁のメス! 今後起き得るリスクは?
クラウドファンディング業者に金融庁のメス! 今後起き得るリスクは?

こんにちは、「ManiMani ~外資系金融マンが本気でお金を考える」という金融系ブログを運営しているA氏と申します。
昨年2016年12月の「みんなのクレジット」に続き、今年2017年2月は「ラッキーバンク」と「トラストレンディング」に金融庁(正確には証券取引等監視委員会)による金融検査が行われているという話を聞きました。
わずか3カ月でクラウドファンディングに3社も金融検査が入るということは、クラウドファンディングが怪しい商売なのでしょうか?金融検査の結果、クラウドファンディングの投資家に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか?
投資家にとっては不安ばかりが募ります・・・。
金融検査を受ける=危険なの?
まずご理解いただきたいのが、「金融検査を受けている=危ない企業」という解釈は間違いである点です。
そもそも金融検査とは?

金融検査は金融庁管轄下の証券取引等監視委員会(以降、監視委員会と書きます)が融資審査や資金管理体制などについて実態把握と管理・監督をするために行うもので、いたってニュートラルな検査です。
クラウドファンディングにおいては、融資先(投資先)である企業の審査が正しく行われているか?投資家から預かったファンド資金は、クラウドファンディング企業の運営資金と分別管理されているか?などがチェックされます。
大手銀行や大手証券会社であれば定期的に検査が入っていますし、他のクラウドファンディング企業についても、ある程度の営業年数や規模に達した際に、不定期の金融検査が行われてきました。
金融検査=危ない企業というわけではない。金融企業の健全性を定期 or 不定期にチェックするために行われる。
金融検査が入ったクラウドファンディングの共通点

直近でクラウドファンディング企業に金融検査が入ったのが「みんなのクレジット」、「ラッキーバンク」、「トラストレンディング」です。
これら3つのクラウドファンディングは、案件利回りが高かったり、キャッシュバックが豊富だったりと、投資家へのリターンが大きいことが共通点としてあげられます。
特に「みんなのクレジット」はサービス開始当初からキャッシュバックキャンペーンを豊富に行っており、本来なら投資家が喜ぶはずのキャンペーンなのに、やり過ぎでは?といった心配の声が投資家から出るほどです。
高利回りのクラウドファンディングだから金融検査が入る?

上記の高利回りだから金融検査の対象となっているかも?という仮説に対しては明確にNOと言うことができます。
金融検査は、過去の検査で経営に懸念がある場合を除いては特定企業を狙って実施されるものではありません。つまり、少なくとも建前上は高利回りだからといって金融検査が入っているとは考えにくいわけです。
また、過去にmaneoも金融検査を経験したことがあるので、必ずしも高利回りなクラウドファンディングだからという理由だけで金融検査の対象になることはなく、ある程度の経営年数や規模に達すると検査が入ると考えるのが妥当でしょう。
しかし、クラウドファンディングが新しい金融サービスであること、また近年の成長が著しいことを理由に注目度が高いことは事実です。そのため、まだ金融検査を受けていないクラウドファンディング企業にも、そのうち検査が入ることが予想されます。
私の予想では、次はクラウドクレジットに金融検査が入るのでは?と思っています。
投資家にとって金融検査はプラスか?マイナスか?

クラウドファンディング企業へ金融検査が入ることについて、投資家はどう考えれば良いでしょうか?わたしは金融検査が入ることは間違いなくプラスだ!と捉えるべきだと思います。
なぜなら監視委員会のチェックが入れば、詐欺や不正を未然に防いでくれる可能性があるためです。クラウドファンディング業界の健全な発展のため、また投資家資金を守るためを考えると、歓迎すべきイベントだと思います。
クラウドファンディングの健全な発展のためと考え、投資家は金融検査を歓迎すべし!
金融検査の結果が悪ければ・・・

金融検査は投資家にとってプラスだ!と申し上げましたが、自分が投資しているクラウドファンディング企業の金融検査の結果が悪ければ、そうとも言ってられません。検査の結果が悪い企業に対しては罰則が科せられることになり、厳しいケースでは営業停止処分さえ下されてしまうのです。
万一、自分が使っているクラウドファンディング企業に営業停止などの罰則が科せられた場合は経営上の懸念が生じ、最悪は倒産やクラウドファンディングからの撤退というケースもあります。
クラウドファンディング業界で今後予想されるリスクは?
今後、クラウドファンディングで生じ得るリスクとはどのようなものがあるでしょうか?金融検査のみならず、幅広く考えてみたいと思います。
①クラウドファンディング企業が金融検査で処分を受けるリスク

まずは先ほどの金融検査について書いた部分でも触れましたが、金融検査の結果、クラウドファンディング企業の融資審査や資金管理がずさんだった場合、何かしらの処分が下されるリスクがあります。
クラウドファンディングにおいても、2015年7月にクラウドバンクを運営する日本クラウド証券が3カ月の業務停止命令を受け、新規の勧誘を伴う業務がストップしました。処分の理由は企業運営資金と投資家資金の分別管理を適切に行っていなかったこと、また顧客に対し必要な情報を適切に通知していなかったことがあげられました。
幸いクラウドバンクは現在も存続していますが、場合によっては処分を受けたクラウドファンディング企業の経営が困難となって倒産してしまい、預け入れている投資家資金もリスクにさらされることになります。とは言っても本来は資金の分別管理がなされていれば、クラウドファンディング企業が倒産しても投資家資金は安全なはずですが、、、。
②クラウドファンディング企業による詐欺のリスク

クラウドファンディング企業が資金を募る立場を悪用して、投資家からお金をだまし取るリスクがあります。
過去のクラウドファンディング以外の例で言うと、集めた資金を海外口座に退避させた後、意図的に経営破たんを行った企業があります。また別の例で言うと、投資家から募った資金をファンド運用に回さずに、別のファンドの分配金として利用するポンジ・スキーム(自転車操業)を行った企業があります。
このような詐欺を行う企業は、投資家に対してはさも問題なくファンドが運営できているような情報を発出するため、投資家側から見て気がつくのは困難だと思います。詐欺を行いそうな企業・代表者へ出資しないための情報収集力が問われます。
③投資先のデフォルトリスク

ファンド資金を投資(融資)している企業の経営が悪化し、デフォルト(債務不履行)となるリスクがあります。デフォルトが発生すると当初予定していた返済ができなくなってしまい、最悪のケースでは、投資家資金が全部 or 一部毀損してしまうことになります。
では、デフォルトリスクはどれくらいの確率で発生するのでしょうか?
日本リスク・データ・バンク社の独自調査によると、2016年12月の全業種の平均デフォルト率は1.07%という結果が出ています。つまり100件貸出先があった場合、1件はデフォルトが生じるという計算になります。
クラウドファンディングのデフォルト率ですが、銀行と比べれば高利回りであることから少なくとも平均デフォルト率:1.07%以上と考えるのが妥当でしょう。クラウドファンディングにはデフォルトはつきものであることの理解と準備が必要ということです。
一方、日本のクラウドファンディングのファンドにおいて、返済の遅延はときどき耳にしますが、デフォルトの発生はほとんど聞いたことがありません。
数多くのクラウドファンディング企業が台頭して多数のファンドが組成されているにも関わらず、ほとんどデフォルトを聞かない状況は、たまたま運が良いのでしょうか?それともクラウドファンディング企業がデフォルトを隠ぺいしているのでしょうか?
いずれにして、長い目で見ればクラウドファンディングでもデフォルトが1%以上は生じうることを頭に入れて、慎重に投資すべきであると思います。
クラウドファンディングには様々なリスクが内在しているため、投資家自身がリスクを理解し回避していく必要がある
リスクを回避するために投資家がとるべき行動
クラウドファンディング投資における様々なリスクを回避するために、わたしが実際に行っている対策についてご紹介します。
クラウドファンディング企業の業績を調べる

クラウドファンディング企業のホームページ等で業績を調べることができれば、必ずチェックします。これを行うことで「①クラウドファンディング企業が金融検査で処分を受けるリスク」を低減できます。
しかしクラウドファンディング企業が株式公開していなければ、業績を公開する義務はありません。実際に業績公開をしているのはmaneoなど一部のクラウドファンディング企業に限られてしまうので、適用範囲が狭いのが残念です。
代表者の経歴を調べる

代表者の経歴を調べて過去に不祥事件などに関与していないか?また関与した企業が倒産していないか?などを調べます。これを行うことで「②クラウドファンディング企業による詐欺のリスク」を低減できます。
実際、わたしがこのチェックを行った結果、代表者の過去の経歴に疑義があったために投資してないクラウドファンディングがあります。
クラウドファンディング企業へ資本出資する企業を調べる

個人がクラウドファンディング企業の良し悪しを評価するには情報量とスキル面で限界があります。それをカバーする方法として、対象のクラウドファンディングが他の企業から資本出資を受けているか否かを調べるという方法があります。
企業がクラウドファンディングへ資本出資する際には相応の情報開示とチェックが行われるでしょうから、世間一般的に優良と言われる企業が資本出資していれば、そのクラウドファンディング企業はある程度安心できると考えてます。これを行うことで「①クラウドファンディング企業が金融検査で処分を受けるリスク」や「②クラウドファンディング企業による詐欺のリスク」を低減できます。
ちなみに優良企業に出資を受けている主な例を下表にまとめてみました。
クラウドファンディング | 主な出資企業 |
maneo | GMOクリックホールディングス, SMBCベンチャーキャピタル |
クラウドクレジット | 伊藤忠商事, マネックスベンチャーズ |
SBIソーシャルレンディング | SBI |
ファンドの担保や保証

わたしがクラウドファンディングのファンドに投資する際には担保や保証について調べ、納得いく情報が得られた場合のみ投資しています。投資したファンドの返済が遅延したり、投資先企業が倒産したりといった最悪のケースまで考えると、自分の資金を守るために担保や保証がしっかり確保されていることが必要と考えてます。
これを行うことで「③融資先のデフォルトリスク」を低減できます。
ちなみに単に「担保・保証あり」と記載があるだけではダメで、その担保や保証がファンドの総額をカバーできる金額(評価額)なのか?まで情報が必要です。例えば総額1億円のファンドがあったとして、「担保あり」との記載があっても評価額が5,000万円程度であれば、万一の時に戻ってくる投資資金は半分以下にななります。
実際、担保や保証の金額を情報開示してないクラウドファンディングはいくつかあって、私はそれを理由に投資を控えています。
まとめ
最後に今回の投稿をまとめます。
最近、クラウドファンディング企業に対して次々に金融検査が入ってます。しかし金融検査が入ったからと言ってクラウドファンディングが危険ということではありません。金融業を営む企業においては、よくある出来事です。金融検査が入るおかげで、クラウドファンディングが将来安定して発展することに寄与してくれるものと期待しています。
一方でクラウドファンディングには言わずもがな投資リスクがあります。投資家は自分自身で手足を動かして情報を入手することによって、それらのリスクを低減させることができます。わたしが実際に行っているリスク低減の施策を今回の投稿に書いたので、参考にしてもらえると幸いです。